車椅子バスケットボール~肉体の強さと共にその精神力に学ぶ~
2015/11/10
実施内容
近年、注目されつつある車椅子バスケットボールですが、その試合映像を見るたびに、肉体の強さと共にその精神力に心を揺さぶられます。それは、大変な苦難を乗り越えて今ここでプレイしておられるからではないか、と想像しました。それは私たちの日常生活の中にも通じるものがあるはずです。そこで、選手の方々が乗り越えてこられた様々な苦難について直接お話を聞くことで、自分達の今後の成長へと結びつける切っ掛けにしたいと思い、今回の夢授業を企画しました。
企画段階では、どのように車椅子バスケと選手の方達の気持ちを伝えるべきか暗中模索の状態でした。まず、企画の中心となる職員が日本選手権で優勝経験がある地元チーム・清水MSTにお願いし、夢授業に協力してくださる選手の紹介をお願いしました。清水MSTは今年の国体では兵庫県代表として出場するチームです。
10月21日、28日に打ち合わせのためチームの練習場へ訪問し、実際に間近で練習風景を拝見しました。更に夢授業の内容と意図についてお話し、チームからのご理解を得ることができました。
■11月2日(月)事前学習1回目■
車椅子バスケとはどのような競技なのかということを映像を活用しながら学習しました。健常者にとっては車椅子はどうしても他人事になってしまします。しかし、実際に生活用車椅子を使用したり、車椅子バスケットのVTRを見ることを通して、自分達が当事者意識を持つことの大切さを実感してもらいました。
企画が進む中で大きな問題点となったことは、当日の授業で行う予定の実技の場所をどうするか、ということでした。当校は通信制高等学校の学習センターであるため、通常の高等学校のように体育館がありません。サークル活動や体育会といった行事の時は体育館を一時的に借りることはありますが、一授業で体育館を用意することは簡単ではありません。そこで、スポーツサークルで普段使っている学校近くの公園に設置しているバスケットボールコートを神戸市建設局にお願いして使用することになりました。
■11月9日(月)事前学習2回目■
前回の事前学習で見たVTRを振り返りながら、車椅子バスケットボールの印象やイメージについて発言してもらうところから授業を始めました。「手で車を動かしながらボールを操るのは難しそう」「転倒した時はどうするのか」「腕の力が普通以上に必要では」など意見が出る中、「障害を持ちながらバスケを続けられる強さはどこから来るのか」という発言も出てきました。その後、自分たちがこれまで経験してきた苦しみや困難をどのように乗り越えてきたか振り返ってもらい、翌日の夢授業に向けて気持ちの準備を整えました。
同日 神戸市障害者スポーツ振興会から競技用車椅子を7台お借りしました。
11月10(火)12:50~14:30、みなとのもり公園にて夢授業実施。生徒から有志(3名)が授業開始1時間前に現地で車椅子を準備し、講師の川西選手をお迎えしました。授業前半に川西選手が車椅子生活になった前後の気持ちについて語られました。下半身が動かない現実にうまく向き合うことができず死んだような目をしていた自分に車椅子バスケを教えてくれた人のこと、できない・無理だと思った瞬間から道は閉ざされてしまうことなど、ご自身の経験を通しての言葉に生徒達は真剣に耳を傾けました。
続いて、実際に競技用車椅子に乗り、コートを何往復かした後、チームに分かれてゲームを行いました。最初は車椅子の操作とボールの扱いに戸惑っていた生徒達も、2セット目には車椅子の操作のコツを早くもつかみ、接近戦が多発。シュートも決まるようになりました。川西選手の細かな心遣いで、スポーツが苦手な生徒も競技に参加する勇気を持てた様子です。
わずか1時間半の授業でしたが、私たちが日常の中でどうしても挫けてしまいそうな時に次のステップを踏み出す強い気持ちの持ち方を、川西選手から学びました。川西選手が話の中で触れられた「人とのつながりがなければ今はない」という言葉は、私たちの心に深く刻み付けられました。
所感
当初はどのように授業を展開するか試行錯誤の連続でしたが、清水MSTの方々のアドバイスや川西選手のお人柄に助けられて、生徒の心に響く授業ができました。生徒たちも積極的に参加し、視野を広げてもらえる機会になったと思います。
主催団体・参加者
私立 第一学院高等学校 神戸キャンパス 全学年
男子11名、女子7名