マンガ評論家 呉智英さんに名古屋キャンパスにお越しいただき、「マンガの読み方講座」を実施してもらいました。呉さんは日本マンガ学会の会長であり、さらに京都精華大学マンガ学科の特任教授もされています。そして、マンガだけでなく多くの文芸評論の本も出されて、幅広く活躍されている文化人です。数年前まで東海エリアで放映される朝の情報番組「ドデスカ」において、土曜日レギュラーコメンテーターもつとめておられました。
しごと講話:2014/11/11
計画・進捗
名古屋キャンパスの職員の中に呉さんと懇意にしている者がおり、ぜひ一度校舎に来ていただき、マンガについて論じてほしいとアプローチしました。呉さんは快く承諾してくださいました。
事前打合せ・事前学習
事前打合せで呉さんは、「水木しげるの<ゲゲゲの鬼太郎>第一巻、そして萩尾望都の<イグアナの娘>を、事前課題として生徒たちに読んできてもらいたい。<ゲゲゲの鬼太郎>、<イグアナの娘>に対象を絞って、そのマンガの背後にあるもの、作者の意図や編集者の意図、その他についても語っていきたい」と言われました。生徒たちに当日までに読んでくるように指導しました。
当日の様子
11月11日(火)、12時50分から呉智英さんの「マンガの読み方講座」を開始。最初に、呉さんはマンガ家水木しげるさんについて論じました。「ゲゲゲの鬼太郎」第一巻では、鬼太郎がおどろおどろしい描き方をされていること。そして現在では、そのおどろおどろしい部分を無くして、子供向けにきれいな絵で可愛く描かれていること。
初期のマンガ家の意図を超えて売れたことにより、雑誌の編集者がもっと鬼太郎をメジャーしていくため、そこに可愛く描いてさらに売れようと意図したこと。マンガはそれを描く作家のこだわりだけでなく、雑誌編集者や出版社の「売れたい」というこだわり、さまざまなこだわりがミックスされて出来上がると言うことを話されました。そして、「イグアナの娘」も今までの少女マンガにないストーリーを取り入れることで、親子の問題、青春期の自己像の問題などを、あざやかに描き出されていることを話されました。非常に分かりやすく、そして楽しく語っていただきました。
事後学習
<事後学習>
講話終了後、生徒たちはワークシート記入。そして、ワークシートをもとに数人でグループ学習を実施。意見や感想、質問などをまとめる。グループ学習で話し合った後に、グループ代表者による発表を実施。
<ワークシートの意見・感想>
・「マンガの世界は、<マンガ家><編集者(出版人)><読者>の三つから成り立っており、その三つが上手く機能して、初めて良いマンガが出来ると説明された。マンガ家だけが好きなものを描きたいと思っても、編集者や読者が支持しないと良いマンガにならないことが分かった。マンガも、いろいろな視点から見ていけることも分かった」(3年生男子)
・「とても情熱的で、よく通る声で分かりやすく説明されました。そして、呉智英先生は何でもよく知っているなと驚きました。いろいろな知識をもとに発言されるので、本当にすごい方だなと思いました。今日は良い話をありがとうございます」(2年生男子)
・「私はマンガがとても好きなので、マンガについていろいろな視点や見方ができることを知り、とても嬉しくなりました。そして非常に勉強になりました」(3年生女子)
・「ネットで、事前に呉智英先生について調べたら、マンガだけでなく現代社会の本もたくさん書かれていることを知った。これからは、呉智英先生の書かれた本も、マンガ評論だけでなく、現代社会に関する本も読んでみたいと思いました」(2年生男子)
所感・振り返り
呉智英さんが、情熱的に楽しそうに語られるので、生徒たちもそれに引き込まれていきました。知的好奇心を大いに刺激されたようです。これからも生徒たちの知的好奇心を刺激でき、意欲喚起に繋げられるものを提供していきたいと考えています。
実施校・参加者
私立 第一学院高等学校 養父校(名古屋キャンパス) 2・3年次生
男子14名、女子7名